株式会社hide kasuga 1896(本社:東京都港区、代表取締役 春日秀之、以下「hide kasuga 1896」)は、この度、三井化学株式会社(以下「三井化学」)と早稲田大学(以下「早大」)理工学 術院総合研究所 高西研究室の研究グループとの産学連携共同研究により、金属代替として 従来の金属ギヤから新しく三井化学が開発している軽量・低摩擦な超高分子量ポリエチレ ン(UHMW-PE)製のギヤを開発することに成功しました。
産学連携の共同研究により開発
本件は三井化学・早大・hide kasuga 1896 の産学連携からなる共同研究となります。
hide kasuga 1896 は循環型社会の構築を目指す中、早稲田大学高西研究室とは「素材xロボットの 融合」に長年取り組んで来ました。 今回は、ロボットが抱える大きな環境課題の一つの“エネルギー消費低減”に繋がる試みで三井化学 が開発した高性能な超高分子量ポリエチレンをロボットに適用する研究開発を実施しました。
プロジェクトメンバー
三井化学:UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)のギヤ開発
早大:ロボットパーツへの適用研究
hide kasuga 1896:産学連携 R&D マネジメント
超高分子量ポリエチレン製の軽量・低摩擦なギヤを開発
駆動部の摩擦軽減によるロボットのエネルギー消費量低減のため、軽量、高強度、摺動性に優れると いう特徴を持つ UHMW-PE*(1 超高分子量ポリエチレン)に着目しました。
UHMW-PE は、炭素原子と水素原子のみからなる化学構造により、他のプラスチックと比較し ても以下のような優れた特徴を持っています。
➀比重が低いため部品の軽量化が可能である
➁POM(ポリアセタール)やフッ素樹脂、PA66ナイロンよりも優れた耐摩耗性がある
➂PC(ポリカーボネート)を上回る耐衝撃性があり、製品の耐久性を向上させることができる
➃各種の科学薬品に対して安定しており、耐薬品性に優れている
➄吸水性が低く、水を使用する部分でも寸法の安定性が保てる
以上の特徴から、UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)は、
高負荷や高速回転がかかるロボットの歯 車の材料として適したものと考え、
今後検証を進めて行きます。
摺動、耐久性、静音を改善する樹脂「LUBMERTM」
UHMW-PEの製品の中でも、「LUBMER TM 」は、三井化学が独自の重合技術をもとに開発した樹脂製品です。摺動性、耐摩擦性、耐薬品性に優れているのはもちろん、静音性、耐久性の向上も期待できま す。また、UHMW-PE の中でも射出成型ができるという重要な特徴を持っています。 今回、三井化学より提供された LUBMERTM (0.97 g/cm3) を用いて作成したギヤを、ロボット指部に 組み込み、関節を動かした際の消費エネルギーの比較を行ったところ、LUBMERTMのギヤは、金属ギヤに比べて約3% のエネルギー消費低減を達成しました。
なお、本研究成果は世界最大の学術研究団体であり、全世界に40万人を超える会員を有する米国 電 子 電 気 学 会 (IEEE) 発行 の 『 IEEE access 』 に 2022 年9月19日 (月)(現地時間) に掲載されました * 1 。
*1 論文情報
雑誌名:IEEE access
論 文 名:Energy Efficiency Improvement of a Robotic Finger with Ultra High Molecular Weight Polyeth- ylene Gear
執筆者名(所属機関名):Takuya Otani*a, Hiroki Mineshita*a, Keigo Miyazawa*a, Yuri Nakazawa*a, Hideyuki Kasuga*b, Ryuki Kawai*c and Atsuo Takanishi *a
*a—Waseda University, *b— hide kasuga 1896 Inc., *c—Mitsui Chemical Inc.
掲載日時(現地時間):2022年9月19日
掲載(予定)URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/9895260
DOI:10.1109/ACCESS.2022.3207752
開発による社会への影響
従来の金属ギヤに替えて LUBMERTMによるギヤをロボットの指部に搭載するだけで、従来に比べて 約 3% のエネルギー消費低減、約89%の部品軽量化を達成しました。ロボットの一つのパーツの素材を変えるだけで、設計変更を行うことなく、約 3%のエネルギー消費低減 を実現することを可能にした本成果は、さまざまなロボットのエネルギー消費低減を生み出し、カーボンニュートラル社会実現への一助となります。素材の特性として低摩擦、自己潤滑性を有するため、潤滑油を全く必要としないロボットはオイルレス 化に近づくため、定期的なオイル交換などのメンテナンスは不要になります。また、低摩擦の歯車は駆動 騒音の低減にもつながり、ロボットが普及した社会で問われる駆動の静粛性も増すと考えられます。省エネ、定期メンテナンスのカット、静粛性の確保などを実現する本研究結果の成果は、ロボット関係 産業だけはなく、EV化が進むモビリティ産業を含め、幅広い産業へと展開、発展の一助となることが期待されています
研究成果の発表会を開催
2022年12月16日(金)に研究成果の発表会イベントを開催します。本イベントでは今回の研究成果の展示に加え、当社代表の春日秀之(工学博士)が開発した素材を軸に キュレーションしたプロダクトの展示も行います。
研究成果 発表会概要
開 催 日:2022年12月16日(金)
場 所:gallery de kasuga
URL:https://www.gallerydekasuga.com/ja/
時 間:13:00 ~ 19:00
T E L:03-6427-7319